Mommy観ました。やっぱりグザヴィエ・ドラン監督はタダものじゃない。
今日、私用で久々に渋谷に行ったんですよ。
Bunkamuraの近くでその用事を済ませたあと、ふと思い立ち、Uplinkへ立ち寄ることに。
Uplinkで映画を観たことは一度もないんですが、いつも気になる映画ばかりやっている素敵プレイスだという認識があるんですよね。
私、映画館で映画を観るのであればどうしても大画面で観たいんです。ふかふかのシートで。だからUplinkは映画を観るというよりは、情報収集と癒しの場というか。
渋谷のあんな辺鄙な場所にあるのに、わざわざあそこに向かう人は映画が好きな人ばかりなんだろうな、と勝手に幻想を抱いてます(笑)
さて、そんなUplinkでは今、”DORAN ANYWAY"と題したグザヴィエ・ドラン監督作品の特集上映と彼が主演している『エレファント・ソング』の上映をしているようです。
会場はグザヴィエ・ドラン一色。最高の場所でした。まさにパラダイス。
必死すぎて写真取り忘れた。アーメン。
2階にはちょっとした物販コーナー的なものがあるんですが、そこではDVDの販売もしていて、思わず手が伸びそうになりました(笑)
『わたしはロランス』の缶バッチとかほんと買えばよかったかも。
めっちゃかわいいんですよ。えー、やっぱり買いに行こうかなー。
でも壁に貼ってあったコラージュを見て、ELLE girlの5月号も取り寄せたくなったしなあ…お金がいくらあっても足りなーい!!!!!(笑)
わたしがグザヴィエ・ドランを好きなことは前の記事にも載せましたが、
最近の活躍っぷりは目を見張るほどですね。
カンヌ国際映画祭の審査員にも選ばれちゃってまあ!!
毎日ルイ・ヴィトンのおされなスーツを着てまあ!!
かっこよすぎてつらいわ…w
明日は映画サービスデーなので『エレファント・ソング』か『マッド・マックス 怒りのデスロード』を観に行こうと企んでます(ジャンル違すぎて笑える)
そんで、本題。(前置き長。)
今日Uplink行って思いだしたんですが、『mommy』観ました。それも1か月前くらいだったかな。
今日、久々にポスターを見て、今更ながらどうしても書きたくなってしまったのよ。
これね、前評判があまりにもよすぎたので、謳い文句にされてる「涙のクライマックスが2回来る」って状態にはならなかったんですよ、私。
ただずーっと茫然としてしまった。すごすぎて。
圧倒的な世界観に呼吸も浅くなって、oasisの『Wonderwall』のシーンはやっぱり号泣だった。1:1のアスペクトを広げるこのシーン。
Mommy (dir. Xavier Dolan) - Wonderwall scene ...
自分次第で、自分の力で、世界は広げられるんだよ、ってグザヴィエ・ドランが言ってるみたいで。自分はなんてちいさな世界に籠ろうとしているんだろうって思った。
こんな瞬間を私の人生でも経験することはできるでしょうか。甚だ謎です。
シングルマザーのダイアン、注意欠陥多動性障害の息子スティーブ、心因性の吃音症を患うカイラが主な登場人物。
キャストはアンヌ・ドルヴァル、アントワン=オリヴィエ・ピロン、スザンヌ・クレマン。アンヌ・ドルヴァルとスザンヌ・クレマンは同監督の『マイ・マザー』でも共演していましたね。
『mommy』『マイ・マザー』。
同様に母親と息子の関係を書きながらも、まったく別物のストーリーを編み出す監督の引き出しの多さに感服。似たり寄ったりなウディ・アレンとは違うww(悪い意味ではございませんので悪しからず。大好きなんだけどね、ウディ・アレン。貶すことは愛情の裏返しですw)
母って偉大だよね。子どもを育てることには休みがないのに、それでも毎日せっせと生活している。
ただ、母親だって人間だから、間違うし戸惑うし泣くしぼろぼろになる。アンヌ・ドルヴァルのぼろぼろになる泣きかたは本当にすごい。説得力が半端じゃない。
そんな風にいつもぼろぼろなダイアンは、それでもスティーブを守ろうと頑張っていて、スティーブはそれをわかっていながらも問題ばかり起こしちゃう。でもそれは病気のせいで、じゃあ一体何が悪いの、誰が悪いの、何を間違えてこうなっちゃったのって疑問ばかり浮かんだ。
でもそれが現実なんだよな。はっきりとした原因なんて、必ずしもあるわけじゃない。色んな要因が複雑に絡まって、諸々の結末を生み出す。
グザヴィエ・ドランの恐ろしい点は、そういう現実をありのままの姿で描く力があることだと思う。例えば、「こういうことがあったから、今こうなった」という風に理由を後付けすることでストーリーに厚みを持たせることってよくあるけど、彼はそうはしない。視点はいつだって現在にいて、あとは未来に進んでいくだけ。過去は振り返らない。だから観客は必死に想像力を働かせて考えるのね。これからどうするんだ?って。
それが今回は切ない別れだったわけだけど、ただ最後の終わり方はドランらしい希望に満ちていたのが救い。悲しみや切なさ、もどかしさを全部振り切って、スティーブは走り出す。必ず希望はあると、ダイアンが語っていたように。
今作、スティーブ役のアントワン=オリヴィエ・ピロンの才能がじわじわ来ました。
ダイアンもカイラもドラン作品常連だから、そりゃもちろん凄まじい演技力だけど、どこか慣れてしまっていて。
そんな中に現れたあのお美しい金髪男子。
可愛いくて無邪気で口が達者で…すごかったなあ。本当にびっくりした。冒頭らへんの小気味良い会話が本当に良かった。でもやっぱりスーパーのカートを押しながら走ったりスケボーに乗って空を仰ぐシーンが最高。あのシーンのポスターほしい!!
グザヴィエ・ドラン監督、アントワン=オリヴィエ・ピロン出演のMVもあるんですよ。私は知らないアーティストの曲だったんですけどね。まさかMVまで創るとは…何者グザヴィエ・ドラン。
でもこのMVかなりエグいんで視聴は自己責任でお願いしますw
いやあ、ほんとすごいもん創るね、グザヴィエさん。
Indochine - College boy (Explicit) - YouTube
話戻りますが、こんなに完璧な映画なんてそうそうないよね。
全部のシーンに無駄がないというか。
3人で写真を撮るシーン、最初は背中を向けていたのに「逆光だ」といってみんなで振り返り、3人の表情が見える。
ああ、こういう”見せ方”ってあるのね、と感心してしまった。
まるで映画論の授業を受講しているようなちょっと複雑な気分にもなったけどね(苦笑)
でもインスタで慣れたはずの1:1アスペクト比や、それを広げるシーンも、実験的なことではなくて、確信を持って彼はすべてを構成しているんだよね。
『トム・アット・ザ・ファーム』でもトムの心情と共にアスペクト比は変化し、『胸騒ぎの恋人』ではスローモーションと独特のサウンドを駆使し、『わたしはロランス』では色彩美が爆発する。
全部むだなんてない。
彼の創る作品はアートであり、アートだけに終わらず文学的でもあり、そして何よりシュールで痛々しく、それにもかかわらず愛に満ちているように思える。
学生時代の教授が「物事には必ず二面性があるってことを覚えておきなさい」とぽつり、こぼしたことをふと思い出した。
グザヴィエ・ドラン監督は、二面性を見極めることや描くことに優れているんだろうな。うん。そんな気がする。
はあ。
こんな作品に出逢えた幸せをなんと呼ぼう。
幸せ以外、ないか。
お疲れっす!!!!!